人狼シミュレーターとしてもSFアドベンチャーとしても最高の作品|グノーシア感想【ネタバレなし】
コロナ自粛の時期に一部で流行ったらしいSFアドベンチャー。
プレイ前は「DEATH NOTE キラゲーム」のようななんちゃってコンピュータ人狼だと思っていたが(この例えが分かる人がいるとは思わないけど)、グノーシアは1人用の人狼ゲームとしてかなり完成度が高い。
そして何よりもADVとしても、とても面白かった。
シナリオ
正直シナリオに関しては真エンドを見るまで特に惹かれるものはなかったのだけれど、ラスト1周での特記事項の伏線回収には思わずうなった。
この作品のなにがすごいって、ADVとしてはかなりテキストが少ないのにここまでのカタルシスを与えられるところ。
内容の凝った作品だと、前後のバックログを見返し用語辞典を開いて「ああ、なるほど」となることも多い。
勿論そういう作品も好きだけど。
グノーシアはゲーム全体を通してもそれほど文章のボリュームはないが、それでも伏線になる部分はプレイヤーの記憶に残るようになっているし、エンディングも納得出来るようになっている。
それは偏に、シナリオに無駄がなく優れているからだろう。
人狼部分をメインに考えて購入しただけに、良い意味で裏切られた。
ただ真エンド条件の、新データでもう1周はノーヒントすぎる…。
キャラクター
当然キャラクターも魅力的だけれど、この良さはシナリオ部分よりも人狼部分に表れていた。
各キャラの性格に即したステータスが割り振られていて、そのステータスで人狼ゲームをしていくから、どんな性格(ステータス)を持った誰が誰を疑っているか、あるいは庇っているかで、誰が嘘をついているか推理出来る面白さがある。
自分が疑われたけど疑われやすいこいつ生き残ってるからなすりつけられるわ、なんてこともよくあった。
そういうところも含めて、この世界でキャラクターが生きているというのを他の作品以上に感じられる。
あとはあの独特のキャラクターデザインがたまらなく素晴らしい。
今後他の作品でも見られるといいなぁ。
人狼パート
まずなによりも、人狼初心者にとても優しいと感じた。
ルールや役職の説明が丁寧でわかりやすいし、その時々の状況をすぐにワンボタンで確認できるのは本当にありがたかった。
そして1人用の人狼ゲームとしての完成度も高い。
人狼をCPUとやると、A「Bは嘘をついている」〜のような、所謂論理の問題になりがちだけど、前述のキャラの個性(ステータス)があるおかげで一辺倒の思考ゲームにはならないようになっている。
メタ推理を入れられるのはある意味知り合いとやる対面人狼に近く、ネット人狼をやっている人にも新鮮かもしれない。
直感のステータスを上げれば演技が下手なキャラの嘘がわかったりするのだけれど、個人的には直感は最低値にして論理推理とメタ推理から絞っていくのがよりリアル人狼らしくて面白かった。
しかしゲーム上の都合とはいえ、プレイヤーがコールドスリープされると自動的に敗北になるのはどうなんだろうか。
特にAC主義者(狂人)は吊られるのも仕事の内みたいなところがあるのに、その仕様があるせいでこのゲームだとあまり派手に動けない。
せっかく各キャラそれぞれのAIがあるんだから、プレイヤー退場後も自動的に議論を進めて勝敗が決まったほうが良かったんじゃないかと思う。
まあそんな小さなしこりはあったけど、全体としてかなり人狼として完成されていた。
まとめ
「ループもののSFADV」、「魅力的なキャラゲー」、「1人で遊べる人狼ゲーム」、ひとつひとつがそれぞれ楽しめるようになっていて、それでいてそれら全てがゲームシステムとして上手くマッチしている最高の作品。
値段も3000円と比較的安めだし、個人的には今年出会えて良かったマイナーゲームのトップに入りそう。
オクトパストラベラーを途中で投げてしまった理由と感想
最初に言っておくと、別に自分はこのゲームのアンチというわけではない。
ないが、だとしたら何故途中で投げたかという話になるのだけれど、それは単に合わなかったと言う他ない。
当然良い部分もあったが、それ以上に「面白くない」と感じてしまう部分が多くなり、これ以上は楽しめないなと思いプレイを断念。
最終的なプレイ状況は各キャラの1章を終えたところ。
時間にすると15時間程度か。
以下、何が面白くないと感じたか書き連ねていく。
もし、このゲームの購入を迷っている人が見ているなら、こういう側面もあるんだなという風に見てほしい。
オクトパストラベラーは神ゲー!って人にはあまり楽しくない話になるはずなので、ご留意を。
興味を引かれない平坦なストーリー
1章をやっただけでストーリーを語るなと怒られてしまいそうだけれど、物語の最初でプレイヤーを引き込めなかったのはRPGとして致命的だと思う。
8人それぞれのストーリーがあって、それら全てにこの先どうなるかというワクワクを感じなかった。
しかも、それぞれにストーリーがあるといっても展開はほとんど一緒で、人助けする→大した理由もなく旅へ、というパターンがひたすら続いていく。
キャラクターのセリフも予想がつくような古臭いテンプレ台詞ばかりで、正直会話中に何度も眠気が襲ってきた。
ストーリーとは少し違うところで、仲間同士の繋がりが全くないのも気になった。
ゲーム自体がオムニバス形式で進んでいくので、各キャラが独立気味になってしまうのはわかるが、一緒に行動する動機づけや説明が一切なく仲間になるのはどうなのか。
近所のモンスター退治を手伝うくらいならまだ脳内補完できるが、盗賊キャラの盗みを何の躊躇いもなく全員で手伝っているのはちょっと笑った。
いや、仲間が必要だーーじゃないが。
さっきも書いたように、ほとんどのキャラが章の初めで人助けをするような善人なのにも関わらず、無条件で仲間入り。
キャラ心情の整合性なんてあったもんじゃない。
そんな感じで、普通RPGをやる上でモチベーションになるはずのストーリーが、なんのプラスにもならなかった。
長くてダレる戦闘
ストーリー部分がプラスにならなかった0とするなら、戦闘部分は大きなマイナスだった。
プレイ当初は、メガテンやペルソナシリーズのプレスターンバトルに似た本作の戦闘システムを、戦略性がありそうでとても気に入っていた。
しかし敵が強くなっていくにつれ、爽快感がなくただ煩わしいだけのシステムになってしまっていた。
相当なレベル差がない限り雑魚戦でも、弱点を突いてシールドを剥がしてブースト攻撃という手順を踏まないといけないので、バトルがまあくどい。
ボス戦も硬いだけで基本同じで、ブレイク→ブースト攻撃を回復しながら繰り返していくだけ。
しかも画像の通り複数ボス+高シールドがデフォなせいで、倒した達成感よりも長い戦闘が終わった徒労感の方が大きい。
エンカウント率が高いのも戦闘のダルさに拍車をかけていた。
一応エンカウント率半減のスキルを覚えられるキャラクターはいるが、選んだ主人公によっては1章中終盤までそのキャラが仲間にならないという現象が起きる。
また、何故かやたら逃げられない。
これはシステムなのかリアルラックのせいなのかはわからないけれど、とにかく逃げられなかった。
自由度が低くワンパターンなシステムの数々
その他システム面での不満点をまとめて。
まずシナリオ攻略ルートの(ほぼ)固定化。
主人公ごとに章分けされていて、1章をクリアすると別の街でそのキャラの2章フラグが立つ、というシステム的に攻略の順番の自由度が高そうに見える。
しかし1章と2章では適正レベルが20ほど違うため、結局他の1章キャラを回り終えてから進めることになる。
ひたすら1人でレベルを上げていけば自由な順番で攻略できるのかもしれないが、果たして何のためにこのシステムはあるのか。
そしてフィールドスキル。
それぞれ固有のスキルによって、町のNPCがただ話すだけの存在ではなくなる…と思ったのは最初のみ。
結局新しい町に着いたら、ひたすら情報をききだし、盗めるだけ盗み、邪魔な場所に立っている村人を倒す、という余計な作業が増えただけ。
手間の割に大した旨味もないので、ただただ面倒だった。
全ての点に言えるのがワンパターンということ。
いつになっても変わりばえしないため段々やる気が削がれていき、結果最後にはゲームを投げることになった。
まとめ
主な不満点はこんなところか。
勿論色んなところで言われているように、グラフィックは本当に素晴らしかった。
画像ではわかりづらいものの、雪や水の表現は感動するレベル。
それ故に最後までプレイできなかったことには少し心残りがあるが、まあ合わなかったんだから仕方ない。
Amazonレビュー等で評価が高い作品ではあるけれど、こんな風に楽しめなかった人もいるよという話でしたとさ。
ゲームとして見れば駄作。映画として見れば凡作|デスカムトゥルー感想【ネタバレあり】
率直な感想としては、変に期待しすぎてしまった感が強い。
というか公式は期待を煽りすぎだ。
実写とゲームの融合みたいな謳い文句には、以前「THE QUIET MAN」というゲームで散々痛い目を見たというのに…。
以下、いくつかに不満点をわけて感想。
ボリューム不足
1960円[税込]という値段はSwitchのダウンロード専用のタイトルとして見れば、比較的安価な部類だと思う。
しかし、それでもクリア時間2時間はないだろう。
今日日アドベンチャーゲームのルート全収集して3時間って聞いたことがない。
いよいよ25日にデスカムトゥルーリリースです。新作映画のように楽しんでいただきたいので1960円税込という価格にしました。インタラクティブ性やゲーム性のある新たな映像体験になったと思います。映像も音楽も素晴らしいです。1960円なので映画に行くつもりで買ってもらえると嬉しいです!#デスカム
— Shinsuke Umeda / 梅田慎介@IzanagiGames (@umeizanagi) 2020年6月23日
製作者はこんなツイートをしているけど、楽しめる時間まで映画と同じにしてどうするんだ。
ゲーム体験の欠如
個人的な意見ではあるけれど、アドベンチャーゲームの楽しさは選択するところにあると思っている。
プレイヤーの選んだルートによって展開が変わっていくから、ゲームとしてそういう作品が面白い。
しかし、本作にはその楽しさはほとんどなかった。
シナリオの都合上仕方のないことなのかもしれないが、最終盤まで一本道で、途中の選択肢も基本的に間違えると巻き戻って選び直しになるだけ。
最後の最後にようやくプレイヤー自身でエンディングを選べる選択肢があるけれど、果たしてこれはゲームである必要があったのか。
むしろゲームにすることで、選択を間違った際の巻き戻し等、映像作品としてのテンポも悪くなっているように感じた。
一部キャラの存在意義
一部に数合わせのようなキャラクターがいたのも不満点。
具体的に言うと、クルシマネネとミノウケンイチ。
この2人は出番もほとんどなく、シナリオ的にも全く関わることがなかった。
特にクルシマネネの方はハズレルートのほんの一幕に出るだけで、あまりにも扱いが酷い。
ミノウケンイチの方も、寒いおまけ映像への出演がメインで、このゲームに本当に必要だったのか疑問だった。
キャストでの客寄せや、登場人物欄でのミスリード要員だったりするのかもしれないけれど、もうちょっと何とかならなかったのか。
良かったところ
散々言ったけれど、決して良いところがなかったわけじゃない。
主演の本郷奏多らの演技はとても素晴らしいものだったし、特にこの作品で森崎ウィンという俳優を知れたのは大きな収穫だった。
それに、公式がやたら「映画」という部分を推していただけあって、シナリオ自体はそこそこ楽しめるものになっていた。
しかし、これもあくまでそこそこであって、期待するとやっぱり肩透かしを食らう。
本作のシナリオは、ダンガンロンパシリーズを作った小高和剛が担当しているが、それらのような意外な展開やどんでん返しなんかはほとんどない。
映画として見ても、毒にも薬にもならないような内容になってしまっているのが残念だった。
まとめ
まとめると、ゲームとしても映画としても中途半端で、だったら既存の名作と言われているものに触れる方がいいよねって感じ。
恐らく自分達のような普段からゲームばかりしてるような人間は、そもそもメインの想定顧客ではなかったんじゃないだろうか。
「ミステリー映画やドラマは好きだけど、ゲームはやらない。けどこれは難しくなさそうだし面白そう」
そんな層へ向けたプロモーションが多かったように思える。
しかし、もうそれなりにブランド化された名前なんだから、次からは小高和剛の名前で買ったユーザーにも少しは目を向けて欲しい。
マンネリは感じたけど5章からの展開は「つまらなくなかったよ」|ニューダンガンロンパV3感想【ネタバレあり】
いやー、面白かった。
クリアした直後の熱がそう思わせてるだけかもしれないけれど、シリーズ1面白かったと言いたい。
6章の感想
しかしまあ、当時賛否両論あった理由も当然わかる。
メタフィクションものって嫌いな人は嫌いだろうし。
しかも2のときとは違って、ある意味作品否定とも取れる演出だったから仕方ない部分もあるかもしれない。
自分は肯定派だし、そもそもこういうどんでん返しを求めてダンガンロンパをプレイしているのだけれど。
個人的にキツかったのは、赤松や百田のオーディションビデオ。
この2人に特別思い入れはなかったけれど、それでも「うわぁ…」って声が出た。
逆に過去作キャラ姿での云々は、単にオールスター感あって嬉しいだけだった。
別に苗木達自身があの言葉を言っている訳じゃないんだし。(そもそも苗木達があの世界に存在しているかというのはともかく…。)
キャラクター
キャラという話で言うと、王馬小吉のキャラクター性は本当に素晴らしかった。
正直2、3章と、過去作から代わり映えのしない展開に飽きていたところを、彼の嘘のお陰で4章あたりから再びモチベーションを上げてプレイできた。
王馬以外にも春川や夢野やキーボ(全員生き残りキャラだ…)みたいな、変化と成長が大きくみえたキャラが多かったのも良い。
フィクションとして作られたキャラクターだからこそ、ある意味他の作品よりも1番魅力的だったのかもしれない。
あれ?でも他の作品もフィクションってことになってるんだったか?
まあ、そういう曖昧なところもV3の魅力か。
ちなみに入間美兎が最初のお気に入りキャラだったのだけれど、下ネタがワンパターンなのと、いちいちくどいので評価がどんどん下がっていった。
というか入間美兎に限らず、今作下ネタ多すぎな気が…。
あとはモノクマーズの存在意義が最後までわからなかったのもマイナス。
結局ストーリーには絡んでこなかったし、終始テンポが悪くなるだけだった。
でも、山ちゃんの演じ分けはやっぱり流石。
ゲーム部分について
ストーリー以外のゲーム部分に関しては、ミニゲームが充実しすぎてちょっとビックリした。
しかも、ひとつひとつが結構面白いせいでハマってしまい、未だ全部に手をつけられていない。
特に育成計画の合間にあるシリーズを超えたキャラのやりとりは、それだけを見たさにプレイしてしまう。
裁判パートのミニゲームは、まあこんなもんかなと。
ウソダマが追加されたノンストップ議論は単純に選択肢が広がって面白かったし、議論スクラムは全員が参加してる感が出ることで議論中の数合わせみたいなキャラがいなくなって良かった。
ただし、ブレインドライブと理論武装は絶対に許さない。
まとめ
何にしても本作が優れたシナリオなのは間違い無いし、シリーズで初めて伏線確認のための2週目プレイをしたいと思った。
長いから全部やるかはわからないが…。
総評として、王馬小吉の言葉を借りるなら「つまらなくなかったよ」という感じで。
やっぱりアニメには勝てないし、比較を抜きにしても微妙な内容|実写版氷菓感想【ネタバレあり】
日常ミステリーな氷菓は、案外実写化に向いているんじゃないかという淡い期待は開始5分で打ち砕かれた。
やはりキャラクターが魅力の作品はことごとくこうなってしまうのか。
実写版のキャラクターについて
まず奉太郎。彼が1番実写化に向いていないキャラだったんじゃないだろうか。
基本ローテンションで呆れながら周囲に振り回される所謂やれやれ系にも似たキャラは、実際の人間がやると痛々しいことこの上なかった。
FF7のクラウドがリメイクされたことで、当時と同じセリフが何故かより臭く感じられるのと似ている。
山崎賢人との相性も悪かったと思う。
モノローグが多いキャラなのに、声だけの演技が上手くないのが致命的だった。
この配役も最後まで謎だった。
広瀬アリス自体は割と好きなんだけど、千反田のイメージとはかけ離れている気がする。
かといってオリジナルの千反田が見れるわけでもなく、最後まで中途半端で違和感のあるヒロインのまま終わってしまった。
どちらかと言えば妹の広瀬すずの方が向いていたんじゃないだろうか。
あくまでもどちらかと言えば、だが。
伊原はただただ嫌な女子だった。
けど、彼女のキャラが立ってくるのは原作でも2巻以降だし仕方ないと言えば仕方ない。
しかし内容にも言えるけど、意味もなく無駄なところで原作に忠実に作るよなぁ。
そのせいでアニメ版の完全劣化として見てしまう。
そこら辺改変にうるさい原作厨も多いし、兼ね合いが難しいのかもしれないけど。
他のキャラに比べて里志は違和感はなかった。
演技力の差というよりは、元々わざとらしい演技臭いキャラだからかもしれない。
総じて、キャラが活きたアニメ版とは真逆の現象が起きていた。
ミステリーとして見た内容
ミステリーとしての内容もちょっと…という感じだった。
基本的な展開は原作通りに進むのだけれど、この映画ではラスト推理の確認パートまで奉太郎は事件の真相に気付いていなかった。
つまり、主題である謎の種明かしは当時の関係者が全部ベラベラ喋ることで為されたのだ。
これってそのジャンルでやっちゃいけないことじゃないか?
奉太郎の推理力も否定しているわけだし。
ここまで原作通りにやってきて、ここでオリジナリティ出す意味がわからなかった。
良かったところとまとめ
悪かったところばかり書いてもアレなので、良かったところも一応探してみる。
うーん、強いて言うなら本郷奏多が出てたところ。
予想していなかったからかなり嬉しかった。
酷く個人的な点だが。
あとはやはり、アニメ版の素晴らしさが再認識できたところか。
アニメ版の「アイスクリーム」の演出や演技でゾクっときたのを、本作の何とも言えない演出や演技で思い出させてもらった。
アニメと映画は別物と言っても、同じ作品である以上比べられるのは仕方ないことだろう。
多分、氷菓初の映像化が実写である本作だったら多少は評判も変わったはず。
それでも謎解き放棄があるせいで良作にはなり得ないが。
しかしこの実写化の影響で、アニメの2期は近付いたのか遠ざかったのか。
もう8年も待っているので、どうにか京アニには頑張ってほしい。いろんな意味で…。
等身大の青春が感じられる爽やかな傑作|アオナツライン感想【ネタバレあり】
ようやくアオナツライン全ルートクリア。
期待していた通りのものが得られた爽やかな作品だった。
特に海希ルートは、公式の宣伝文句でもある「等身大の青春」がこれでもかというくらいに感じられてとても良かった。
以下、クリアした順に各ルートの感想。
結ルート
1番王道に恋愛ものしていたと思う。
しかしそれ故に結構地味だった。
共通ルートでは結がきっかけとなって物語が始まるけれど、その実他のヒロインのサポートしている時が1番彼女らしかったという、ある意味不遇なヒロイン。
でもタイトルの「アオナツ」も「ライン」も結初出の言葉だったし、やっぱりキャラクター的には唯一無二のキャラだったなという感じはする。
あとは結の父親が良かった。
言うならば結ルートにおける恋愛の壁のひとつなのだけれど、ただ過保護な親バカなだけじゃなく、この作品で数少ない1人の大人のキャラとしてしっかり描かれていて、すごく好みのキャラクターだった。
格ゲーのくだりが1番テンション上がったのは内緒。
それ以降大して生かされることのない設定だったのが残念だったけど。
ことねルート
5人の夏休みの目標が明確で、協力感が良かったルート。
特に最後のゲリラバンドはベタに青春っぽい。
オーディションでのことねのセリフからも、5人の友情ってところに重きが置かれていたルートに思える。
しかし終わりがなんとも中途半端。
せめてオーディションに受かって芸能人として一歩踏み出してから終われよ、と。
現実的に考えると、友達がそういう道に入ると否が応でも関係が変わってしまうから、ルートの方向性を見るにそこは描けなかったのかな、とか考えたりする。
関係性の変化ってのは海希ルートで丁寧にやるわけだし。
ヒロインとしては作中1変化のあったキャラ。
毒吐き後輩キャラだったのに、いつのまにか甘ったるい蜂蜜みたいな言葉しか口から発さなくなっていた。
ただデレただけでなく、心情がちゃんと描かれているから人間として成長したところが見れたのも良かった。
3人の中では1番好きなヒロイン。
海希ルート
海希ルートというより千尋を含めた3人のルート。
本作のメインルートといっても過言ではないはず。
共通ルートでの主人公や海希のモノローグも、このルートを見ないとなんのこっちゃって感じだし。
こういうゲームって、主人公が恋愛パートに入ったら親友ポジションのキャラは自然にフェードアウトしていくイメージだったけど、このルートでは親友2人が結ばれたあとの千尋の着地点まで用意されていたのが良かった。
中学時代含めて千尋が1番好きなキャラ。
ベタすぎるが、この場面は思わず泣きそうになった。
泣きそうになっただけであと1歩泣けなかったのは、「いや、今生の別れでもあるまいし泣きすぎじゃない?」とか思ってしまったから。
別に誰かが引っ越すだの死ぬだのじゃないんだから、また3人で遊べばいいじゃん。部活忙しくなるって君らさぁ…みたいな。
まあ、表面上変わらないようにしていても、付き合った2人とそうじゃない1人だとやっぱり今まで通りにはいかないのかね。
そう考えると、千尋も海希に対して親友以上の気持ちをほんの少しどこかで持っていたのかもしれない。
3人の絆が強すぎて結とことねは完全に霞んでしまっていたけど、この2人に支えられて海希ルートは成り立っていた。
告白の後、ビデオ通話で2人が千尋に報告するところは、形は変わってしまったけど変わらない友情みたいなものが見られて好きなシーン。
あとは誰のルートにも入らず千尋と2人だらだらと夏休みを浪費する、所謂バッドエンドのようなものもあったが、これは特に触れるところもない。
強いて感想を挙げるとすれば、こういう浪費こそ青春とも言えるよねってことくらいか。
まとめ
そんな感じで、ど真ん中ストライクな好みで大満足な作品だった。
知名度や売り上げ的に難しいんだろうけど、メディアミックス化してくれたら嬉しいなと。
エロ要素抜きにしても、それに耐えうるシナリオだとそう思うわけですよ。
興味があってまだプレイしていない人は、ぜひ買って売り上げに貢献してほしい。